コラム
共有持分の相続人不存在で起きること|共有持分の行方と他の共有者が引き継ぐ方法
更新日時:2025年11月14日

共有不動産の共有者が亡くなり、相続人がいない「相続人不存在」になった場合、その共有持分はどうなるのでしょうか。この記事では、相続人不存在とはどのような状態かという基本的な知識から共有持分の行方、そして他の共有者が持分を引き継ぐための具体的な手続きと注意点まで、詳しく解説します。
相続人不存在とはどういう状態?
相続人不存在とは、亡くなった方(被相続人)の財産を引き継ぐ相続人が一人もいない状態のことです。本来、故人の財産は民法で定められた法定相続人に引き継がれますが、相続人不存在だと、該当する相続人がいないために財産の行き先が宙に浮いてしまいます。
相続人不存在となるのは、主に以下のような状況にあるときです。
初めから法定相続人がいない
相続人全員が相続放棄をした
相続欠格や廃除により、すべての相続人が相続権を失った
共有不動産において共有者の一人が相続人不存在になると、その人の共有持分をどう取り扱うかが大きな問題となるのです。
相続人不存在だと共有持分はどうなる?
共有者の一人が亡くなり、相続人不存在となった場合、その方の共有持分は最終的に誰のものになるのでしょうか。遺言書や「特別縁故者」の存在によって結論が変わるケースもあるため、正確に理解しておく必要があります。ここでは、考えられる3つのパターンについて見ていきましょう。
原則は他の共有者に帰属する
民法第255条に定められているとおり、共有持分を持つ方が相続人なくして亡くなった場合、その持分は他の共有者のものとなるのが原則です。
(持分の放棄及び共有者の死亡)
第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
(引用:e-Gov法令検索「民法」)
この規定により、基本的には残りの共有者が、それぞれの持分割合に応じて持分を取得することになります。ただし、自動的に名義が変更されるわけではなく、持分を移転するための法的な手続きを踏まなければなりません。手続きに関しては、のちほど詳しく解説します。
遺言書がある場合はそれに従う
民法の原則には、2つの例外があります。その1つが、亡くなった共有者が生前に遺言書を作成していた場合で、このときは遺言書の内容が優先されます。
遺言書によって、共有持分を譲る相手が指定されていれば、その人が新たな共有者となります。遺言で指定する相手は法定相続人に限定されず、親族ではない知人やお世話になった恩人など、故人(共有者)が自由に決めることができます。
このとき、共有持分の譲渡先として指定された人が一人であれば、共有者の名義が変わるだけで、他の共有者に直接的な影響は発生しないでしょう。
申し立てにより特別縁故者に分与される
もう1つの例外として、「特別縁故者」の存在も押さえておく必要があります。これは、亡くなった共有者と特別な関係にあった人(特別縁故者)が家庭裁判所に申し立て、それが認められた場合には、故人の財産が分与される制度です。民法第958条の2では、特別縁故者に該当する人の範囲を次のように定めています。
(特別縁故者に対する相続財産の分与)
第九百五十八条の二 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
(引用:e-Gov法令検索「民法」)
申し立てが認められれば、特別縁故者の権利が他の共有者より優先されることになるのです。ただし、特別縁故者と認められるかどうかは、あくまで家庭裁判所の判断に委ねられます。
相続人不存在の共有持分を他の共有者が引き継ぐには?
亡くなった共有者の持分を他の共有者が引き継ぐためには、法的な手続きを踏まなければなりません。自動的に権利が移るわけではないため注意が必要です。相続人不存在が判明してから共有持分が移転するまでの大まかな流れは以下のとおりです。
- 相続財産管理人の選任を裁判所に申し立てる
- 債権申し立ての公告が行われる
- 相続人捜索の公告が行われる
- 特別縁故者の申し立て期間が設定される
- 他の共有者に持分が移転する
ここでは、各ステップの内容を詳しく見ていきます。
(1)相続財産管理人の選任を裁判所に申し立てる
まず、家庭裁判所に対して「相続財産管理人」の選任を申し立てることから始まります。相続財産管理人とは、亡くなった人の財産を管理・清算する役割を持つ人のことです。具体的には、被相続人の債務を清算したり、特別縁故者への財産分与を行ったりしたうえで、最終的に残った財産を国庫に帰属させる手続きを進めることになります。
相続財産管理人の選任の申し立ては、共有持分の場合、利害関係者である他の共有者が行うことができます。相続財産管理人は裁判所によって選任され、弁護士や司法書士といった専門家が選ばれるケースが多いでしょう。選任の申し立て後、被相続人が亡くなったことが2ヶ月間官報で公告され、相続人がいれば名乗り出るよう促されます。
なお、相続財産管理人の報酬は亡くなった人の相続財産から支払われますが、相続財産だけでは支払いを賄えないことが懸念されるため、申し立て時に「予納金」を裁判所に預ける必要があります。
(2)債権申し立ての公告が行われる
相続人が現れなかった場合、次に債権者などへ名乗り出るよう促す公告が行われます。これは、亡くなった方にお金を貸していた人(債権者)や、遺言によって財産を受け取ることになっている人(受遺者)がいないかを確認するための手続きです。公告期間は2ヶ月以上と定められています。
(3)相続人捜索の公告が行われる
債権者への公告を経てもなお相続人が現れない場合、最後の相続人捜索として、6ヶ月以上の期間を設けて公告が行われます。この期間内に相続人が見つからなければ、法的に「相続人不存在」であると確定します。ここまでの手続きを経て、ようやく相続人がいないことが正式に認められるというわけです。
(4)特別縁故者の申し立て期間が設定される
相続人不存在が確定すると、そこから3ヶ月間、特別縁故者が財産分与を申し立てることのできる期間が設けられます。前述のとおり、亡くなった人と生計を共にしていた人や、療養看護に尽くした人などが特別縁故者として申し立てできます。
この期間内に申し立てがあり、家庭裁判所がそれを認めれば、相続財産の一部が特別縁故者に引き継がれることになるでしょう。特別縁故者に分与される財産に共有持分が含まれるかは、相続財産の全体の状況によって決まります。
(5)他の共有者に持分が移転する
特別縁故者からの申し立てがなかった場合、または申し立てが認められなかった場合、あるいは申し立てが認められても共有持分が分与されずに残った場合には、共有持分を他の共有者に帰属させる手続きへと進みます。債権の清算などを経ても共有持分が残っている場合に、相続財産管理人の権限によって、他の共有者へ持分移転登記などの手続きが行われるのです。

相続人不存在で共有持分を帰属させる場合の注意点とは?
相続人不存在の共有持分を引き継ぐには、時間や費用がかかるなど、いくつかの注意点が存在します。手続きを進める前に、知っておきたいポイントを確認しましょう。
相続財産管理人の選任にはお金がかかる
相続財産管理人の選任を申し立てる際、裁判所から「予納金」の納付を求められるケースが多いでしょう。予納金の額は事案によりますが、少なくとも50万円程度、場合によっては100万円以上かかることもあり、申立人にとって大きな金銭的負担となりかねません。
手続きには時間と労力がかかる
一連の手続きには、法律で定められた公告期間が含まれるのが特徴です。そのため、相続財産管理人の選任を申し立ててから、実際に共有持分が他の共有者に帰属するまで、最低でも1年以上の期間を要するのが一般的といえます。相続人がいないからといって、すぐに持分が手に入るわけではない点は理解しておくべきでしょう。
共有者同士の協力が求められる
相続人不存在の問題は、各共有者が単独で解決できるものではありません。手続きをスムーズに進めるためには、他の共有者全員の協力が不可欠といえます。もし共有者同士の関係性が良好でない場合、話し合いが難航し、手続きを円滑に進められないおそれも出てくるでしょう。
まとめ
共有者の一人が相続人不存在となった場合、その共有持分は原則として他の共有者に帰属することになります。ただし、遺言書や特別縁故者の申し立てにより、必ずしも他の共有者に持分が譲渡されないことも頭に入れておくべきです。
また、他の共有者が持分を引き継ぐには、相続財産管理人の選任申立てなど、一連の法的な手続きが必要です。手続きには1年以上かかるのが一般的であるうえ、予納金などの費用負担が発生することも忘れてはなりません。相続人不存在の共有者が判明した場合は、他の共有者全員で協力し、計画的に手続きを進めることが何よりも大切です。