コラム
共有名義の空き家はどうする?放置による問題と対処法を紹介
更新日時:2025年11月14日

共有名義の空き家は、活用するにも売却するにも手間がかかるうえ、放置すれば多くの問題を引き起こす可能性があります。この記事では、共有名義の空き家がなぜ問題となりやすいのか、放置した場合にどのようなリスクが考えられるのか、そして具体的な対処法は何なのか、わかりやすく解説します。この記事を参考に、問題が深刻化する前に適切な対処を検討しましょう。
共有名義の空き家が問題になりやすい背景
共有名義の空き家は、一般的な空き家と比較して問題が複雑化しやすい傾向にあります。その背景には、共有不動産ならではの事情や、近年の社会的な変化が関係しています。ここでは、主な2つの背景について解説しましょう。
活用や売却の制約が多い共有不動産
空き家の中でも、とりわけ共有名義の物件が問題になりやすいのは、活用や売却に多くの制約が存在するためです。共有不動産には複数の共有者がおり、それぞれが物件に対する共有持分を有しています。
この状態で空き家を解体したり売却したりするには、共有者全員の同意が不可欠です。また、第三者へ短期的に賃貸する場合でさえ、持分価格の過半数の同意を得なければなりません。しかし、共有者間で活用方針をめぐる意見が食い違ったり、一部の共有者と連絡が取れなくなったりすると、計画を進めることが困難になります。結果として、誰も主体的に動けないまま、空き家が放置される事態に陥りやすいのです。
高齢化の進展で相続空き家が増えている
高齢化が進む現代において、親世代から実家を相続するケースが増えていることも、問題の一因です。このとき、複数の子どもたちが法定相続分どおりに財産を受け継ぐと、実家は共有名義の不動産となります。さらに、その子どもたちの代から孫の代へと相続が繰り返されると、権利関係はより一層複雑化していきます。
こうなると共有者間の合意形成は極めて難しくなり、問題の解消はさらに困難を極めるでしょう。そのうえ、管理責任の所在も曖昧になるため、誰も手入れをしないまま長期間放置されることにつながるのです。

共有名義の空き家の放置で起こり得る3つの問題
共有名義の空き家を「とりあえず現状維持で」と放置してしまうと、さまざまな問題を引き起こしかねません。金銭的な負担の増加はもちろん、近隣住民との思わぬトラブルに発展するおそれもあるため、十分な注意が必要です。
建物が荒廃して周辺環境に影響をおよぼす
共有名義の空き家を適切に管理せず放置していると、建物の老朽化は加速度的に進行します。やがて建物自体が倒壊するリスクが高まるほか、手入れがされていないことで害虫や動物が棲みついたり、不審者や犯罪集団の温床になったりするおそれもあります。こうした状態を放置し続ければ、近隣の住環境に深刻な悪影響を与えてしまうかもしれません。
もし建物の倒壊や外壁の落下などで他人に損害を与えた場合、その賠償責任は、所有者である共有者全員が連帯して負うことになります。
固定資産税を負担し続けなければならない
空き家であっても、不動産を所有しているかぎり、固定資産税は納め続けなければなりません。共有不動産にかかる固定資産税は、各共有者がそれぞれの持分割合に応じて、全員で負担するのが原則です。ただし、納税通知書は代表者1名のもとに送付され、その代表者がいったん全額を立て替え、のちに他の共有者へ負担分を請求する形が一般的です。
この請求に応じず費用を負担しない共有者が現れると、代表者やその他の共有者がその分を肩代わりせざるを得ない状況が生まれます。その結果、共有者間の不公平感を生み出し、トラブルの原因になるかもしれないのです。
管理不全空き家や特定空き家に指定される
適切な管理が行われないまま放置されている空き家は、自治体から「管理不全空き家」や「特定空き家」に指定されるリスクもはらんでいます。
まず、1年以上居住実態がなく、放置すれば将来的に「特定空き家」になり得ると自治体が判断した場合、「管理不全空き家」に認定される可能性があります。この認定を受けると行政指導の対象となり、指導に従わない場合、勧告が行われます。勧告の対象になると、固定資産税の軽減措置である「住宅用地の特例」の適用対象から除外され、税額が最大で6倍に跳ね上がるおそれもあるのです。
固定資産税の「住宅用地の特例」とは、住宅を建てるための敷地について、面積に応じた税額控除を受けられる優遇措置のこと。面積ごとの軽減内容は次のとおりです。

さらに状態が悪化し、倒壊の危険性が著しく高いなど、保安上・衛生上有害だと判断されると「特定空き家」に指定されます。特定空き家の場合も同様に、自治体による助言・指導が行われたのち、是正されないと勧告が行われて「住宅用地の特例」の対象外となるのです。勧告にも従わないと命令が下され、それに違反すれば50万円以下の過料が科されます。それでも状況を改善できなければ、最終的に行政による強制撤去の対象となってしまうおそれがあるのです。強制撤去になった場合、建物の解体にかかった費用は、共有者全員に負担が求められます。
共有名義の空き家の問題を解消する対処法5選
共有名義の空き家が抱える問題は、放置していても自然に解決することはありません。権利関係が複雑化して解決が困難になる前に、共有者間で協力し、具体的な対処法を検討することが求められます。ここでは、主な5つの対処法を見ていきましょう。
空き家を解体する
空き家がもたらすリスクを解消する方法として、建物を解体して更地にする選択肢があります。建物を解体すれば、倒壊の危険や、周辺環境に与える悪影響の原因を根本から取り除けます。日々の管理の手間からも解放され、共有者間での管理責任をめぐるトラブルも未然に防げるでしょう。
ただし、解体には相応の費用がかかるうえ、更地にすると固定資産税の「住宅用地の特例」が適用されなくなり、税負担が増加する点は大きなデメリットです。そのうえ、建物の解体後も土地の共有状態は続くため、将来的なリスクを完全に払拭できるわけではありません。
空き家全体を第三者へ売却または賃貸する
共有者全員が売却に同意しているなら、空き家と土地を一体で第三者に売却する方法が有効です。売却によって得られた代金は、それぞれの持分割合に応じて公平に分配します。また、建物をリフォームしたり建て替えたりしたうえで、第三者に賃貸し、継続的な賃料収入を得るという活用法も考えられるでしょう。
もっとも、これらの方法は共有者が一人でも反対すると実行に移せません。共有者間の意見に隔たりがある場合、全員の足並みをそろえること自体が、実現のための大きなハードルになるかもしれません。
共有者同士で持分を譲渡する
もし共有者の中に、その空き家を有効に活用したいと考える人がいるなら、その人に他の共有者の持分をすべて譲渡する方法も考えられます。一人の共有者に持分を集約すれば、その人の単独所有となり、売却や活用といった次のステップも円滑に進められるようになります。
ここでの注意点は、持分の譲渡価格をめぐってトラブルになりやすいことです。全員が納得感のある価格で譲渡できるよう、客観的で正当性のある不動産評価額を基準とし、必要であれば不動産鑑定士へ相談することも検討しましょう。
共有物分割請求訴訟を提起する
共有者同士での話し合いがどうしても平行線をたどる場合は、裁判所に共有物分割請求訴訟を提起するという選択肢もあります。この訴訟では、裁判所が共有者間の事情を踏まえ、公正中立な立場で分割方法を決定します。裁判所の判断に委ねることで、当事者間での協議よりも、納得感のある結論を得やすいといえるでしょう。
ただし、裁判所が「代金分割」が相当と判断した際には、不動産が競売にかけられることも。市場価格より安価で売却されるなど、必ずしも望んだとおりの結果になるとはかぎらないため注意が必要です。
共有持分のみを第三者へ売却する
自分の持つ共有持分のみを売却する方法であれば、他の共有者の同意は不要です。ただし、制約の多い共有持分を一般の個人が購入するケースは稀なため、売却先は共有持分を専門に買い取る不動産会社が基本となります。
この方法のメリットは、共有関係から確実に離脱できるうえ、売却代金としてまとまった現金が手に入ることです。なお、他の共有者の同意は不要とはいえ、将来のトラブルを避けるため、可能であれば、持分を売却する旨を他の共有者へ事前に共有しておくのが無難でしょう。

まとめ
共有名義の空き家は、活用や売却などに共有者全員の合意形成が求められるため、どうしても放置されやすいのが実情です。しかし、放置を続けると、建物の倒壊リスクや固定資産税の負担増、さらには行政からの厳しい措置を受けるなど、多くの問題を引き起こしかねません。
対処法としては、建物の解体や全員合意による売却、共有持分の譲渡・売却など、さまざまな選択肢が存在します。どの方法が最適かは、共有者間の関係性や物件の状況によって変わってきます。問題の解決が困難になる前に、まずは共有者同士でしっかりと話し合い、専門家の力も借りながら、早めに行動を起こすことが何よりも大切です。