コラム
共有持分の共有者が行方不明!そんなときの対処法と手続き|不在者財産管理人の申し立てと民法改正後の新制度
更新日時:2025年10月24日

共有不動産の共有者が行方不明になると、管理や売却ができずに困ってしまうケースも少なくありません。この記事では、共有者が行方不明になった場合に起こりうるリスクから、具体的な対処法まで詳しく解説。2023年4月の民法改正で新設された制度も紹介するので、共有者の所在不明で困っている方は、ぜひ解決に向けた参考にしてください。
共有者が行方不明の場合に起こりうるリスク
共有不動産の共有者が一人でも行方不明になると、さまざまなリスクが生じます。放置すれば、経済的な負担の増大や権利関係の複雑化を招く恐れがあるため、早めに対処することが大切です。具体的にどのようなリスクがあるのか、詳しく見ていきましょう。
行方不明の共有者分の管理費用を負担しなければならない
不動産は所有しているだけで、設備の点検・更新、清掃といった管理の手間が発生します。そのうえ、毎年固定資産税や都市計画税も課されます。こうした維持管理にかかる費用は、持分割合に応じて共有者全員で負担するのが原則です。
しかし、共有者の一人が行方不明になると費用の請求ができません。その結果、他の共有者が立て替えざるを得なくなるのです。行方不明者の持分割合が大きいと、残された共有者の経済的な負担は一層重くなります。
共有不動産の活用や処分ができない
共有不動産全体を売却したり、大規模な増改築を行ったりする場合、共有者全員の同意を得なければなりません。これは法律上の「変更行為」にあたり、建物の解体や用途変更、長期の賃貸借契約(建物は3年超、土地は5年超)なども含まれます。
共有者の一人が行方不明だと、この「全員の同意」を取り付けることが不可能です。そのため、他の共有者が「不動産を売却したい」「賃貸に出して有効活用したい」と考えても、手続きを進められず、不動産が実質的に塩漬け状態となってしまいます。
権利関係がますます複雑になる
共有不動産は、相続が発生すると持分が細分化され、権利関係が複雑化しやすい特徴を持っています。ただでさえ意見の集約が難しいうえに、行方不明の共有者がいると、問題はさらに深刻化しやすいでしょう。
行方不明者に相続が発生しても気づけず、知らないうちに新たな共有者が増えている可能性も。そうなると、ますます共有者間の意思統一は困難になり、活用も処分もできないまま不動産が放置されるおそれがあります。

行方不明の共有者を探す方法とは?
あとで紹介する対処法を講じるにしても、まずは行方不明の共有者の所在を十分に調査した事実が求められます。以下に紹介する方法で、所在確認を尽くさなければなりません。
共有不動産の登記簿を取得する
不動産の登記簿(登記事項証明書)は、法務局で誰でも取得できる公開情報です。ここには不動産の所有者として、共有者の氏名と住所が記載されています。他の共有者は利害関係者にあたるため、登記簿に記載された住所をもとに戸籍附票などをたどることで、行方不明者の現在の居住地を突き止められる可能性があります。
弁護士に依頼して共有者の住民票や戸籍を取得する
弁護士には「職務上請求権限」という特別な権限が認められています。これにより、職務上必要であると判断されれば、第三者の住民票や戸籍謄本を取得することが可能です。行方不明の共有者の素性がよくわからない、自力での調査が難しいといった場合には、弁護士に依頼し、所在確認から連絡までを任せるのが賢明な選択です。

【対処法①】不在者財産管理人の申し立て
自力で調査しても共有者の所在がわからない場合、法的な手続きを検討しましょう。対処法は大きく分けて3つあります。まずは「不在者財産管理人の申し立て」について解説します。
不在者財産管理人とは?
不在者財産管理人とは、行方不明になった人に代わって、その人の財産を管理する権限を持つ人のことです。利害関係者の申し立てにより、家庭裁判所によって選任されます。
不在者財産管理人が選任されると、その管理人が行方不明の共有者に代わって意思表示をすることが可能になるのです。例えば、共有不動産の売却や建て替えなど、本来であれば共有者全員の同意が必要な処分行為も、不在者財産管理人の同意を得ることで実行できます。ただし、不在者財産管理人が処分行為や行方不明者の持分売却などを行うには、事前に家庭裁判所の許可を得る必要がある点は認識しておきましょう。
不在者財産管理人の選任までの流れ
不在者財産管理人の選任は、一般的に次の流れで進みます。
- 他の共有者(申立人)が家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる
- 家庭裁判所で、不在者の状況などに関する審理が行われる
- 不在者財産管理人が選任される
申し立て後、家庭裁判所による不在者確認に約1〜4ヶ月を要するなど、手続きには時間を要します。スムーズに進んでも3ヶ月、場合によっては半年以上の期間を見ておく必要があるでしょう。
不在者財産管理人制度の注意点
不在者財産管理人制度には、いくつか注意点があります。まず、不在者財産管理人は家庭裁判所が選任するため、他の共有者の推薦人が選ばれるとは限りません。公平な財産管理の観点から弁護士などの専門家が選任されるケースが多く、その場合は報酬を支払わなければなりません。
報酬は本来、行方不明者の財産から支払われますが、財産が不足する場合に備え、申立人が「予納金」として数十万円(一般的に20万円以上、高いと100万円に達することも)を裁判所に納めるよう求められます。
そのうえ、最終的に売却などが認められるかは家庭裁判所の判断次第であり、希望どおりの処分が叶うとは限らない点にも注意が必要です。
【対処法②】所在等不明共有者の持分取得制度
不在者財産管理人制度は、予納金の負担が大きいなど、必ずしも使いやすい制度とはいえません。加えて、高齢化社会の進展で所有者不明の不動産の増加が社会問題化していることを背景に、2023年4月1日に改正民法が施行されました。これにより、追加された制度が「所在等不明共有者の持分取得制度・持分譲渡制度」の2つです。
所在等不明共有者の持分取得制度とは?
「所在等不明共有者の持分取得制度」とは、所在がわからない共有者がいる場合に、他の共有者が裁判所に申し立てることで、その行方不明者の持分を取得できるという制度です。持分の取得を希望する共有者は、裁判所が定めた行方不明者の持分の時価相当額を法務局に供託するよう求められます。
これにより、行方不明者の財産権を保護しつつ、残りの共有者による円滑な不動産管理や活用が可能になるのです。なお、共有者が3人以上いる場合は、行方不明の共有者以外の全共有者がこの制度を利用できます。
所在等不明共有者の持分取得制度を利用するときの流れ
持分取得制度の手続きの流れは、以下のとおりです。
- 他の共有者が裁判所に制度の利用を申し立てる
- 裁判所が、異議があれば届け出るよう公告を行う
- 登記簿に記載されている共有者へ通知が行われる
- 定められた期間内に異議がなければ、裁判所が行方不明者の持分価格を決定する
- 申し立てた共有者が、決定された価格相当額を法務局に供託する
- 取得の裁判が行われ、申立者が行方不明者の持分を取得する
所在等不明共有者の持分取得制度の注意点
この制度を利用するには、前提として、共有者が本当に行方不明なのかを入念に調査することが不可欠です。戸籍や住民票をたどるなどの調査を尽くしたうえで申し立てる必要があります。調査が不十分と判断されれば、申し立てが却下されることもあるでしょう。
また、行方不明の共有者の持分が相続によって取得された財産である場合、相続開始時から10年が経過していないと制度を利用できません。
【対処法③】所在等不明共有者の持分譲渡制度
2023年4月の民法改正では、もう一つ「所在等不明共有者の持分譲渡制度」という新たな選択肢も加わっています。これも、行方不明の共有者がいる不動産の問題解決を後押しする制度です。
所在等不明共有者の持分譲渡制度とは?
「所在等不明共有者の持分譲渡制度」とは、裁判所に申し立てることにより、行方不明の共有者の持分を第三者に譲渡する権限が、他の共有者に付与される制度を指します。
この制度の大きな特徴は、他の共有者全員が、各自の持分のすべてを第三者に譲渡することが利用の条件となっている点です。これにより、行方不明の共有者がいるために売却できなかった共有不動産全体を、第三者へまとめて売却することが可能となります。
所在等不明共有者の持分譲渡制度を利用するときの流れ
この制度の手続きは、一般的に以下の流れで進めます。
- 他の共有者が裁判所に制度の利用を申し立てる
- 裁判所が異議届出期間などを公告する
- 登記簿上の共有者へ通知が行われる
- 期間内に異議がなければ、裁判所が行方不明者の持分の価格を決定する
- 申し立てた共有者が、行方不明者のための供託を行う
- 持分譲渡の権限を付与する裁判が行われる
- 裁判の確定から2ヶ月以内に、不動産の全持分を第三者に譲渡する
所在等不明共有者の持分譲渡制度の注意点
この制度において、譲渡権限を付与するのは裁判所ですが、買主を見つけるなどの実際の売却活動は、申し立てた共有者の責任で進める必要があります。そのうえ、裁判の確定から2ヶ月以内に売却を完了させなければ、決定が無効になるため注意が必要です。
また、行方不明者の損失を補填するため、裁判所が定める供託金を負担する必要があります。持分取得制度と同様に、共有持分が相続財産の場合、相続開始から10年が経過していないと利用できないことも注意点です。

まとめ
共有不動産の共有者が行方不明になると、管理費用の負担増や、売却や活用が難しくなるなど、さまざまな問題を引き起こします。行方不明の共有者がいるときは問題を放置せず、なるべく早めに弁護士などの専門家へ相談するのがおすすめです。
行方不明者への対処法としては、従来の「不在者財産管理人制度」のほか、2023年の民法改正で新設された2つの制度が有効です。それぞれの特徴や手続き、注意点を理解し、状況に応じた対策を検討しましょう。