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共有物分割訴訟の落とし穴:解決まで5年以上かかることも?

更新日時:2025年07月11日


共有物分割訴訟とは?


共有不動産をめぐるトラブルを解決する法的な手段の一つに、「共有物分割訴訟」があります。これは、裁判所に判断を委ねて、不動産の共有状態解消を目指す訴訟です。具体的にどのような制度で、どういった意義があるのか見ていきましょう。

 

共有不動産の共有状態を解消する「共有物分割訴訟」


共有持分を持っている共有者には、他の共有者に対して共有物の分割を求める「共有物分割請求権」という権利が認められています。

 

【前回記事へのリンク】共有物分割請求権とは?共有持分をめぐるリアルな権利関係をチェック

 

この権利を行使し、共有者の一人が共有状態の解消を求め、裁判所に提起する法的な手続きが「共有物分割訴訟」です。共有者同士のトラブルや意見の対立が深刻化し、これ以上話し合っても解決が見込めない場合、この訴訟が選択肢となります。

共有物分割訴訟を請求する意義


共有不動産は、第三者への賃貸などの管理行為、売却を含む変更行為について、共有者単独の判断で行うことができません。特に売却については、共有者全員の同意が必要とされるなど、通常の不動産に比べて扱いが難しい資産といえます。

 

しかし、共有物分割訴訟は、他の共有者の同意がなくても単独の共有者による提訴が可能です。公平中立な第三者である裁判所に判断を委ねるため、当事者だけでは感情的になりがちな問題も、公平で納得感のある解決が期待できます。

 

また、裁判所は原則として共有状態を解消する前提で判断を下します。そのため、共有物分割訴訟は、ほぼ確実に共有関係から抜け出せる手段として大きな意義があるといえるでしょう。

 

共有物分割訴訟における3つの分割方法


共有物分割訴訟において、裁判所が命じる分割方法には、主に「現物分割」「代金分割」「価格賠償」の3種類があります。どの方法を選択するかは裁判所の判断に委ねられ、不動産の性質や共有者間の事情などを総合的に考慮して判決が下されます。

 

3種類の分割方法の概要と、主なメリット・デメリットは以下のとおりです。



これらの分割方法は、必ずしも一つだけが選ばれるわけではなく、複数の方法が組み合わされることもあります。

 

共有物分割訴訟には時間とコストがかかる


 

共有状態を解消するうえで有意義な共有物分割訴訟ですが、デメリットも存在します。特に注意を要するのが、多大な時間とコストがかかる点です。

 

訴訟を起こしてから判決が下されるまでには、原告(提訴した共有者)と被告(その他の共有者)が裁判所で交互に主張を繰り返す「口頭弁論」が、複数回にわたって開かれます。そのため、手続きがスムーズに進んだとしても、解決までには半年から1年程度の期間を要するのが一般的です。もし、第一審の判決に不服でどちらかが控訴・上告をすれば、数年単位の時間がかかることもあります。

 

そのうえ、弁護士報酬や訴訟費用が発生する点も忘れてはなりません。対象となる不動産の価値や裁判の進行状況にもよりますが、トータルで数百万円から、場合によっては1,000万円単位のコストがかかることもあるので注意しましょう。

 

共有物分割訴訟で注意すべきその他のリスク


 

共有物分割訴訟には、時間や費用以外にも注意すべきリスクが存在します。訴訟に踏み切る前に、これらのリスクもしっかりと理解しておきましょう。

望まない結果になることがある


共有物分割訴訟では、裁判所がさまざまな事情を勘案し、中立的な立場で分割方法を判断します。そのため、訴えを起こした共有者の望むとおりの判決が出るとは限りません。

 

例えば、自身は住み続けたい、あるいは不動産を所有し続けたいと考えていたにもかかわらず、裁判所の判断で物件が競売にかけられ、結果的に手放さざるを得なくなるケースも考えられます。物件の扱いについて明確な希望があるなら、できるだけ共有者間での解決を目指すべきでしょう。

競売になると手に入る分配金が小さくなる


裁判所の判断で、不動産の売却代金を持分に応じて共有者間で分ける「代金分割」が命じられた場合、売却の方法は主に「競売」となります。競売による売却価格は、一般的な市場価格の6〜8割程度になることが多く、相場よりもかなり低い金額で落札されるケースも少なくありません。

 

売却価格が低ければ、共有者が受け取れる分配金も当然少なくなってしまいます。経済的な損失を避けたい場合は、訴訟ではなく、自身の持分のみを専門の買取業者に売却する「持分売却」を検討したほうがよいでしょう。

他の共有者との関係が悪化することがある


共有物分割訴訟に至るケースの多くは、すでに共有者間の関係性が悪化し、当事者間の話し合いでは解決が難しい状況と考えられます。

 

さらに裁判となれば、法廷の場で互いの主張をぶつけ合うことになります。これにより、他の共有者との関係がさらに悪化し、修復不可能な状態になってしまう可能性も大いにあるでしょう。もし、他の共有者との関係性を壊したくないのであれば、できる限り訴訟は避け、時間をかけてでも話し合いでの解決を目指すのがベターです。

 

それでも共有物分割訴訟を検討したい3つのケース


リスクも多い共有物分割訴訟ですが、状況によっては有効な解決策となります。ここでは、訴訟を検討すべき代表的な3つのケースを紹介します。

(1)他の共有者との分割協議がまとまらないケース


共有者から共有物分割の請求があった場合、他の共有者はその協議に応じる義務があります。しかし、分割方法や条件などで意見が対立し、協議が不調に終わるケースも少なくありません。このように、話し合いでの解決が困難な場合には、第三者である裁判所に判断を委ねる共有物分割訴訟が有効な選択肢になるでしょう。

(2)特定の共有者が共有不動産を独占的に使用しているケース


共有者の一人が、他の共有者の同意を得ずに共有不動産を独占的に使っていて、他の共有者がまったく利用できないといった状態になるケースがあります。この場合も、まずは話し合いによる解決を目指すべきですが、それでも独占状態が解消されない場合には、共有物分割訴訟が有力な選択肢となるでしょう。

(3)共有状態の相続物件で相続人の一人が生活しているケース


不動産を相続した場合、通常は遺産分割協議を経て、誰か一人が単独所有するのが一般的です。しかし、何らかの事情で共有名義のまま相続する場合もあります。

例えば、亡くなった父親名義の実家を、母親と子どもが共有で相続し、そこに母親が一人で暮らしているといったケースが考えられます。このとき、実家で実際に生活している母親の単独所有へと見直すため、あえて共有物分割訴訟を起こすこともあるのです。


まとめ


共有物分割訴訟は、当事者間の話し合いで解決できない共有不動産の問題を、法的に解消するための強力な手段といえます。裁判所の判断により、ほぼ確実に共有状態から抜け出せるので、状況によっては有力な選択肢となるでしょう。

 

しかし、解決までに長い時間と高額な費用がかかるうえ、望まぬ結果になったり、他の共有者との関係が悪化したりするリスクがつきまといます。まずは協議による円満解決を目指し、どうしても難しい場合は、共有持分の売却も並行して検討するのがおすすめです。

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