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不動産の共有持分をあげると贈与税がかかる?計算方法や注意点、持分放棄についても解説

更新日時:2025年06月9日

 



 

 

共有不動産の共有持分を所有している方のなかには、資産の一環として、子どもや孫などに贈与したいと考えている方もいるでしょう。そのような方にとって、贈与税がかかるかどうかは大きな問題です。

この記事では、共有持分を贈与した場合にかかる贈与税の計算方法や節税方法などを解説するとともに、持分を放棄したときの贈与税についても紹介します。

共有持分に贈与税はかかる?


 



 

まず、共有持分を贈与した場合、贈与を受ける人(受贈者)に贈与税はかかるのか、制度と仕組みを確認しましょう。

共有持分の無償譲渡は贈与に該当する


結論から言うと、共有持分を他人に無償で譲渡することは贈与であるとみなされるため、贈与税の課税対象になります。不動産の贈与税額は、土地と建物の相続税評価額に応じて決まります。そのため、資産価値の大きい共有持分を贈与した場合、受贈者の税負担が重くなる場合もあるでしょう。

贈与したい共有持分の評価額が高いケースや、他にも多くの資産贈与を行うケースでは、贈与税を節税するための工夫が必要になります。

暦年課税と相続時精算課税


贈与税の課税方式には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。

基本となるのは「暦年課税」です。これは、1年間で贈与を受けた資産の合計評価額に対して課税される方式であり、年間110万円の基礎控除額が設けられています。よって、贈与を受けた金額が年間110万円以内であれば、申告は必要ありません。

60歳以上の直系尊属(父母、祖父母など)から、18歳以上の推定相続人や孫に対して贈与する場合に限り使えるのが「相続時精算課税」です。この方式も年間110万円の基礎控除があるほか、受贈者ごとに2,500万円の特別控除が設けられています。暦年課税が累進課税方式を採用しているのに対し、相続時精算課税の税率は一律20%です。最初にこの方式を選択すると、途中で暦年課税に切り替えられないため注意しましょう。

相続時精算課税はその名のとおり、贈与者(贈与する人)の相続が発生したとき、それまでの課税分が相続財産に課税される仕組みです。ただし、相続開始までに贈与税を支払っている場合には、その分が相続税から控除されます。

【暦年課税】共有持分にかかる贈与税の計算方法


ここで、贈与税の基本知識として、暦年課税における不動産の贈与税の計算方法を紹介します。不動産の場合、土地と建物それぞれの相続税評価額に所定の税率をかけて、贈与税額を求めるのが原則です。土地の相続税評価額は「路線価方式」または「倍率方式」で求め、建物の相続税評価額は固定資産税評価額を用います。

土地の相続税評価額を求める2つの方式



共有持分にかかる贈与税の基本的な計算式、税率と控除額は以下のとおりです。

贈与税額 =(相続税評価額 × 持分割合 – 基礎控除額110万円)× 税率 – 控除額

贈与税の税率と控除額(一般税率)



贈与税の税率と控除額(特例税率)



※18歳以上の人が直系尊属から贈与を受けた場合に適用される税率

(出典)国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

共有持分にかかる贈与税の節税方法




共有持分にかかる贈与税を節税するには、どのような方法が有効なのでしょうか。ここでは代表的な2つの方法を紹介します。

相続税精算課税を利用する


1つ目の節税方法は、相続税精算課税を利用する方法です。父母や祖父母などの直系尊属から18歳以上の子どもや孫への贈与に限り、この方法が使えます。

相続時精算課税には2,500万円の特別控除があるため、共有持分が高額な場合、控除による大きな節税効果が期待できます。また、暦年贈与と同じ年間110万円の基礎控除が適用されるのもポイントです。

例えば、父から18歳以上の子どもへ、4,000万円の共有持分を一括で贈与するケースを考えてみましょう。通常の暦年課税で贈与した場合、贈与税額は「(4,000万円−基礎控除110万円)×50%−415万円=1,530万円」となります。一方、相続税精算課税で贈与した場合の贈与税額は「(4,000万円−特別控除2,500万円)×20%=300万円」となり、大幅な節税が可能です。

生前贈与で分割贈与する


生前贈与を使って節税する方法もあります。暦年贈与には毎年110万円の基礎控除が設定されているため、贈与額が毎年110万円に収まるよう共有持分を分割して贈与すれば、贈与税を節約できる可能性があるのです。

ただし、毎年同じ日に同じ金額を贈与していると、計画性や定期性を理由に「一括贈与」とみなされ、結局課税されるリスクがあります。分割贈与を行う場合には、贈与金額や贈与契約締結日を毎年変えるなどして、税務署に一括贈与とみなされないよう考慮しましょう。面倒でも贈与契約書は毎年作成し、贈与を銀行振り込みで行うことにより、贈与を行った証拠を残すことができます。

共有持分を放棄した場合の贈与税はどうなる?




共有持分は、贈与や売却以外に放棄するという選択肢も取れます。持分を放棄した場合、贈与税はどのようになるのでしょうか。

共有持分の「放棄」とは?


共有持分の「放棄」とは、共有不動産において、一人の共有者が自らの共有持分を放棄することをいいます。放棄された共有持分は、他の共有者の持分割合に応じて、自動で分配されるのが基本的な仕組みです。共有持分の放棄は、共有持分の売却などと同様、他の共有者の同意を得ることなく自由に行えます。

贈与や売却と比べた放棄のメリットとデメリット


贈与や売却と比較したとき、放棄にはどのようなメリット・デメリットがあるのか見ていきましょう。

 

放棄のメリットとしては、自分の意思だけで行える点が挙げられます。贈与や売却は、そもそも受贈者がいなければ行うことができませんが、放棄に関しては相手が不要です。その反面、放棄は共有持分を受け取る相手を選ぶことができないため、柔軟性は劣ります。

また、共有持分の放棄を法的に主張するためには、持分移転登記を完了させなければならない点もネックです。放棄そのものには他の共有者の同意が不要なものの、登記は他の共有者と共同で申請しなければならないので、結局他の共有者の承諾を得る必要が生じます。

加えて、放棄は現金化できないのもデメリットです。贈与のように、資産を遺したい相手に引き継ぐこともできません。共有持分の譲渡先がない場合には、共有持分のみでも売却できる専門買取業者に依頼するのが得策でしょう。

共有持分の売却をご検討中の方は、数多くの買取実績と豊富な経験を誇る大正ハウジングまでお気軽にご相談ください。

共有持分売却に関するお問い合わせ

放棄した場合でも贈与税はかかる


「放棄」という名前ではありますが、他の共有者からすれば、各自の持分割合に応じて共有持分を贈与されたのと同じことです。そのため、共有持分を受け取った他の共有者に贈与税が課税されます。このときの税額の計算方法は、先ほど紹介した一般的な贈与税のケースと同様です。さらに、追加される共有持分への不動産取得税、毎年の固定資産税の負担も発生します。

共有持分の放棄は他の共有者の負担を増やすことにもつながるため、やはりあらかじめ放棄の意思表示を行い、承諾を受けておくのが無難でしょう。

まとめ


共有持分を贈与する場合でも、通常の不動産の贈与と同様、贈与税が課税されます。贈与する共有持分の評価額が高いと、受贈者に大きな負担がかかるため、相続時精算課税や分割贈与などを使った節税も検討したいところです。

贈与する相手が見つからない場合、持分放棄という選択肢も取れますが、他の共有者の負担を増やすことにもつながります。共有持分を処分したいなら、放棄ではなく売却を検討するのもよいでしょう。

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