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共有不動産における固定資産税の分担方法|納税義務は誰にある?

更新日時:2025年06月9日



複数の所有者がいる共有不動産にも、通常の不動産と同様に固定資産税が課税されます。納税義務者は固定資産の所有者ですが、共有不動産の場合、誰に納税義務が発生するのでしょうか。

この記事では、共有不動産における固定資産税の取り扱いや分担方法について、基本を分かりやすく解説します。また、共有不動産の固定資産税を滞納することによるリスクも紹介するので、共有不動産を所有している方はぜひご一読ください。

共有不動産の固定資産税は誰が納税する?


固定資産税は、その年の1月1日時点で、固定資産課税台帳に所有者として登録されている方が納税義務者となります。それでは、所有者が複数いる共有不動産の場合、固定資産税の納税義務は誰が負うのでしょうか。まずは、共有不動産における固定資産税の基本的な考え方を見ていきましょう。

共有者全員が責任を負う「連帯納税義務」


結論から言うと、共有不動産における固定資産税の納税義務者は共有者全員です。地方税法第10条の2において、共有不動産をはじめとする共有物や共同使用物にかかる税金や徴収金は、共有者が連帯して納税する義務を負うとされています。この義務を「連帯納税義務」と呼びます。

全員で納税義務を負うということは、もし固定資産税を支払わない共有者がいた場合、連帯責任で他の共有者が負担しなければならないということです。

第十条の二 共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。

(引用)e-Gov法令検索「地方税法

共有不動産にかかる固定資産税の負担割合


固定資産税をはじめ、共有不動産にかかる税金には連帯納税義務があるものの、その負担割合は共有者の持分によって異なります。民法では、税金を含む共有物の管理にかかる費用に関しては、各共有者の持分割合に応じて負担割合を決める旨が規定されています。

第二百五十三条 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。

(引用)e-Gov法令検索「民法

とはいえ、連帯納税義務はすべての共有者に発生します。たとえ持分割合がわずかであっても、他の共有者が納付しない場合には、肩代わりをしなければならない点に注意が必要です。

実際に納税するのは共有者の代表者


前述のとおり、固定資産税の負担割合は各共有者の持分割合によって決まりますが、最終的に納税するのは「代表者1名」とされるのが一般的です。つまり、負担割合に応じて、各自が別々に納めるわけではありません。

自治体が毎年発行する固定資産税納付書は、自治体から代表者へ送付されます。この納付書にしたがって、代表者が一括して固定資産税を納付するのです。代表者が全額を納付した瞬間、他の共有者の納税義務は消滅します。ただし、代表者はあくまで書類の送付先として指定されているだけで、当然共有者全員で納税するのが大前提です。

共有不動産が新たに生じた場合、共有者間で話し合って代表者を決め、自治体に「代表者指定届」を提出します。提出は義務ではないものの、届出をしないと自治体によって自動的に代表者が選出されてしまいます。この場合、持分割合の多い共有者や、実際に不動産を占有している共有者が選出されるのが一般的です。

相続で共有不動産になったケースでは、自治体から送付される「相続人代表指定届」に必要事項を記入して返送することにより、代表者が決定されます。

代表者は固定資産税課税台帳に記載されているので、代表者が不明な場合は確認しておきましょう。なお、代表者を変更する際は、自治体に「共有代表者変更届出書」を提出する必要があります。

共有不動産の固定資産税の分担方法




先ほども紹介したとおり、固定資産税の納付手続きは、共有者の代表者が一人で行うのが一般的です。そのため、代表者は他の共有者の負担分を立て替えておき、別途徴収する必要があります。他の共有者が支払いを拒絶したり、音信不通になったりするリスクもあるため、代表者の負担が大きくなりやすい点は注意すべきでしょう。

なお、代表者が期限までに固定資産税を納めなかった場合、連帯納税義務を負う共有者全員が「滞納」したとみなされてしまいます。仮に、他の共有者が代表者へ先行して負担分を支払っていたとしても、代表者が納付していなければ、あらためて他の共有者が納付しなければなりません。

この場合、他の共有者は二重で固定資産税を負担していることになるため、納税後、代表者に対して返金を請求することが可能です。

代表者に認められる「求償権」


先述のとおり、代表者は固定資産税をまとめて納付するため、他の共有者の負担分を一時的に肩代わりするケースが多くなります。代表者は納税後、他の共有者に対して、それぞれの共有持分に応じた負担分を支払うよう求めることができます。この権利が「求償権」です。

注意しなければならないのは、求償権には時効があるということです。特に、数年分をまとめて請求する場合は要注意。現行の民法では5年が時効とされているため、固定資産税を肩代わりして納付したときから5年以内に、他の共有者へ支払いを請求する必要があります。

共有不動産の固定資産税を滞納することのリスク




代表者が固定資産税を滞納した場合、その影響は他の共有者にも及ぶことになります。共有不動産の固定資産税を滞納すると、どのようなリスクがあるのか解説しましょう。

延滞金が課せられる


先に述べたように、固定資産税には納付期限が設けられています。期限までに納付しないと、遅延した日数に応じた延滞金が上乗せして課税されます。延滞金の税率には「延滞税特例基準割合」という特例措置が設けられており、2025年における延滞金の計算方法は次のとおりです。

固定資産税の延滞金の計算方法(2025年)



※滞納した税額に1,000円未満の端数がある場合、端数は切り捨てて計算します。

※算出した延滞金のうち、100円未満の端数は切り捨てます。

例えば、2025年5月31日を納付期限とする、1期分の固定資産税10万円を滞納したケースを想定します。この固定資産税を10月31日に納付したとすると、滞納日数は「30日+123日」となるので、次のように計算することが可能です。

(10万円 × 2.4% × 30日 ÷ 365)+(10万円 × 8.7% × 123日 ÷ 365) ≒ 3,100円

共有不動産の評価額が高かったり、数年にわたって滞納したりした場合、延滞金がまとまった金額になることもあるので注意しましょう。

共有者の財産が差し押さえられる


地方税法第371条により、固定資産税の納付期限から20日以内に納付がない場合、自治体から督促状を送付することが定められています。督促状が届いたら、できるだけ速やかに納付しなければなりません。なお、同法第372条において、督促状を発した場合、自治体は発送に要した手数料を納税義務者に請求できる旨も規定されています。

第三百七十一条 納税者が納期限までに固定資産税に係る地方団体の徴収金を完納しない場合においては、市町村の徴税吏員は、納期限後二十日以内に、督促状を発しなければならない。但し、繰上徴収をする場合においては、この限りでない。

第三百七十二条 市町村の徴税吏員は、督促状を発した場合においては、当該市町村の条例の定めるところによつて、手数料を徴収することができる。

(引用)e-Gov法令検索「地方税法

さらに、督促状を発出してから10日経過しても納付されない場合、自治体は滞納者の資産を差し押さえることが認められています。ここで重要なのが、滞納者は納税義務者であり、共有不動産の場合は共有者全員とみなされる点です。

つまり、代表者が滞納した場合でも、状況によっては、他の共有者の財産まで差し押さえの範囲が及ぶ可能性があるのです。

共有持分の固定資産税を負担に感じるなら売却も検討


なかには、共有不動産をまったく活用できていないにもかかわらず、共有持分に応じた固定資産税を毎年負担している方がいるかもしれません。他の共有者への共有持分の譲渡などが難しい場合には、共有持分を専門の買取業者に売却するのも一つの方法です。共有持分のみであれば、他の共有者の同意を得なくても売却できるため、速やかに所有権を手放すことができます。

共有持分の売却を検討するなら、買取実績の豊富な大正ハウジングまで、ぜひお気軽にご相談ください。

共有持分売却に関するお問い合わせ

まとめ


共有不動産にかかる固定資産税は、共有者の代表者が一括して納付するのが基本ですが、納税義務を負うのは共有者全員です。納税割合は持分割合によって決まるものの、その割合に関係なく、連帯納税義務を負っています。万が一滞納すると、延滞金の支払いや資産の差し押さえといったリスクもあるため、全共有者が協力して、期限内の納付を徹底しましょう。

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