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共有物分割請求権とは?共有持分をめぐるリアルな権利関係をチェック

更新日時:2025年06月9日

 



不動産の共有持分を所有しているものの、管理や処分に制約が多く、使い勝手の悪さを感じている方もいるのではないでしょうか。そのような状況を解決するため、共有者に認められている権利が「共有物分割請求権」です。

この記事では、共有物分割請求権とはどのような権利なのか、共有物を分割するにはどのような方法があるのかを解説します。さらに、この権利を行使する際に注意すべきポイントも紹介します。

共有物分割請求権とは


共有不動産をはじめ、複数の所有者のいる共有物全体の管理や処分に関する意思決定は、一人の共有者が単独で行うことができません。自分の自由な意思で管理や処分を行えないため、共有物は使い勝手が悪いといえます。

こうしたことから、共有者には、他の共有者に向け、共有状態の解消を請求する権利が認められています。この権利が「共有物分割請求権」です。民法第256条の規定により、共有者はいつでも分割請求権を行使できるとされています。

第二百五十六条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。

2 前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない。

(引用)e-Gov法令検索「民法

上の条文にあるとおり、共有物分割請求権には法的拘束力があります。よって、いずれかの共有者によって請求が行われたら、全共有者が分割について協議・実行する必要が生じるのです。

共有分割請求権を防ぐ「不分割合意」


先ほどの民法第256条の条文の但し書きを読むと、5年以内であれば「共有物分割を行わない」旨を契約で定めることができるとされています。これを「不分割合意」といい、共有者間での合意があれば、共有分割請求権の行使を防ぐことも可能です。同条の第2項では、不分割合意に関する契約内容を更新する場合も、期間は5年までとするよう記載されています。

つまり、不分割合意を定める契約は認められているものの、5年ごとに全共有者の意思確認をする必要があるということです。

共有物分割請求後の流れ


前に紹介したとおり、共有物分割請求権が行使されたら、他の共有者は共有物の分割に向けて協議することが求められます。しかし、必ずしも共有者同士の協議が順調にいくとは限りません。もし協議が不調に終わった場合、分割を希望する共有者は、裁判所に分割を請求することが可能です。

第二百五十八条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。

2 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。

一 共有物の現物を分割する方法

二 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法

3 前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。

4 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。

(引用)e-Gov法令検索「民法

上の条文にもあるとおり、請求を受けた裁判所は「現物分割」もしくは「価格賠償による分割」のいずれかを共有者に命じることができます。2つの分割方法のいずれも難しい場合には、裁判所は最終的に共有物を競売にかけて「代金分割」させることも可能です。

これらの分割方法に関しては、次の章で詳しく解説します。

共有物を分割する3つの方法


 



共有物分割請求権が行使されると、共有物の分割に向けて協議を行わなければなりません。共有物を分割する方法としては、大きく「現物分割」「代金分割」「価格賠償による分割」の3種類があります。それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

(1)現物分割


共有物の分割方法で最もベーシックなのが「現物分割」です。現物分割は、共有物そのものを各共有者の持分割合に応じて分けるシンプルな方法です。

例えば、共有者3名のいる500m2の土地を現物分割するケースで考えてみましょう。3名の持分割合がそれぞれ「5/10・3/10・2/10」だった場合、各共有者に対して、次の面積で土地を分筆することになります。

 

・共有者①:500m2 × 5/10 = 250m2

・共有者②:500m2 × 3/10 = 150m2

・共有者③:500m2 × 2/10 = 100m2

 

土地は分筆できるので、比較的現物分割がしやすい資産といえます。ただし、土地の形状や分筆の仕方によって、分筆後の土地の使い勝手に差が出る点には注意が必要です。

一方、土地と建物がセットになっている共有不動産では、どの共有者に建物のある土地を割り当てるのかなど、調整が複雑になりがちです。そのため、現物分割が難しいケースも少なくないでしょう。

(2)代金分割


「代金分割」とは、共有物を売却して現金に換え、その現金を持分割合に応じて共有者に分配する方法です。現金は金額で明確に分けることができるため、公平な分割が期待できます。ただ、共有不動産を代金分割するとなると、土地や建物を手放さなければならないという問題が生じます。

代金分割が行われるのは、「現物分割が難しい場合」と「現物分割によって、共有物の資産価値が大きく下がってしまうと考えられる場合」の2パターンです。土地は現物分割が可能ですが、特殊な形状をしていたり、面積が狭かったりする場合、現物分割すると一つ一つの土地の利用価値がなくなってしまうかもしれません。このようなケースでは、代金分割を検討することになるでしょう。

民法の条文で確認したように、共有物分割請求においては、裁判所が共有物を競売にかけたうえで代金分割させることが認められています。

(3)価格賠償による分割


ある共有者が他の共有者へ価格賠償を行うことによって、共有物を分割する方法もあります。価格賠償による分割には、「全面的価格賠償」と「一部価格賠償」の2つの方法が存在します。

価格賠償による2つの分割方法



例として、3名の共有者A・B・Cで300m2(価格1,800万円)の土地を分割するケースを考えてみましょう。3名の共有持分は1/3ずつとし、Aの持つ土地の価格は800万円、Bは600万円、Cは400万円とします。

 

共有者Aが全面的価格賠償を行う場合、AはBに600万円、Cに400万円の代償金を支払い、300m2の土地のすべてを取得することになるでしょう。

 

一方、一部価格賠償では3名の共有持分の価値を平等にするため、最高額の土地を持つAが、最低額の土地を持つCへ200万円を支払います。これにより、全員が600万円分の持分を取得したことになるのです。

共有物分割請求権で気をつけるべき4つの注意点


 



共有物分割請求権を行使するにあたっては、気をつける注意点が4つあります。それぞれの詳細を確認しましょう。

(1)共有解消までに時間がかかる


共有物分割請求を行い、共有者同士の協議で分割案がまとまれば何ら問題はありません。しかし、共有物分割請求権を行使しなければならないということは、共有者間で考え方の隔たりがあるケースがほとんどでしょう。そのため、協議では意見がまとまらず、共有物分割訴訟まで発展する可能性があります。

訴訟になると、判決が出る前に1年以上かかるケースも少なくありません。分割を請求したからといって、すぐに分割が実現するわけではないので注意しましょう。

(2)共有者同士の関係悪化につながる


共有物分割訴訟まで発展すると、共有者ごとの意思とは関係なく、裁判所の決定にしたがって強制的に分割が行われます。共有者の意思に反していても判決にしたがわなければならないため、特に請求した共有者と、その他の共有者の間で関係が悪化する恐れがあるでしょう。

お互いに良好な関係を維持するためにも、できるだけ共有者間の協議で解決したいところです。

(3)必ずしも希望どおりの結果にならない


共有物分割訴訟に持ち込むと、分割方法の最終的な判断を裁判所に委ねることになります。例えば、「共有地を分割して土地を単独所有したい」という狙いで訴訟を起こしたとしても、裁判所が「代金分割すべき」という判決を下せば、それにしたがって土地を手放さなければなりません。

他の共有者の意思に反するだけでなく、請求した共有者本人にとっても、望まない結果になる可能性がある点は十分認識しておきましょう。

(4)競売判決が出る可能性がある


裁判所が、現物分割も価格賠償による分割も難しいと判断した場合、共有物は競売にかけられることになります。不動産の競売による落札価格は、一般的に売却相場の60〜70%程度にとどまり、市場価格に比べるとかなり安価になりがちです。

競売判決が下ると、分割請求した本人を含むすべての共有者の取り分が大きく減ることになりかねません。競売になるくらいなら、あらかじめ共有持分のみを売却したほうが、手元に多くの資金を残せる可能性があります。

現物分割や価格賠償による分割が難しいと想定される場合には、共有持分の売却を検討するのも一つの方法です。

まとめ


共有物分割請求権は、すべての共有者に認められる権利であり、行使すれば法的拘束力をもって分割協議に持ち込むことが可能です。協議が不調の場合、裁判所に分割を請求できるものの、分割方法の判断は裁判所次第となります。競売の判決が下れば、すべての共有者の資産を減らすことになるかもしれません。

共有物分割請求によるリスクを回避し、速やかに共有状態を離脱したいなら、共有持分のみを売却することをおすすめします。ぜひ一度、共有持分の買取実績が豊富な大正ハウジングまでご相談ください。

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