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共有持分の放棄はできる?法律上の注意点を解説

更新日時:2025年04月25日

そもそも「共有持分の放棄」とは?


不動産を複数人で所有しているとき、各所有者が持っている権利の割合を「共有持分」といいます。この共有持分、たとえ一部でも自分のものとして登記されている以上、「もういらない」「手放したい」と感じることもあるでしょう。たとえば相続で得た空き家の持分、ほとんど使う機会のない私道の権利などが該当します。では、自分の共有持分を「放棄」することは法律上可能なのでしょうか?



 

 

民法上は「放棄」できるけど…


結論から言うと、民法上は共有持分の放棄は可能です。民法第255条には「共有者はその持分を放棄することができる」と記載されています。ただしここで言う「放棄」とは、無条件に消滅させるという意味ではなく、「自分の権利を他の共有者に移す」というニュアンスに近いものです。つまり、放棄した持分は法律上、他の共有者に自動的に帰属することになります。しかし実務においては、「放棄したい」と言うだけでは処理できません。登記変更の手続きが必要であり、その際には放棄の意思を証明する書類や印鑑証明、登記申請書なども求められます。

 

放棄に潜むリスクと注意点


共有持分を放棄した場合、その不動産に関する「権利」だけでなく「義務」からも解放されると思われがちですが、これは誤解です。たとえば固定資産税。たとえ持分を放棄しても、登記簿上で名義が残っていれば、税金の請求は届き続けます。また、管理責任や損害賠償など、放棄しても消えない義務が存在する場合もあります。さらに、他の共有者が放棄された持分の増加を望まないケースもあります。つまり、自分が放棄したつもりでも、登記が更新されず宙ぶらりんの状態になることも少なくないのです。



 

放棄した持分の「帰属先」が問題に


民法の建前では、放棄された持分は他の共有者に移ることになっていますが、現実にはすんなりいかないことが多いです。他の共有者が持分の追加取得を拒否することもありますし、そもそも放棄されたことに気づいていない場合もあります。加えて、持分放棄により登記が変更されていない限り、法務局では「持分を放棄した」とは見なされません。そのため放棄者としての法的責任から完全に逃れるのは難しく、結果として「名義はあるけど誰にも管理されていない共有不動産」ができあがってしまうことになります。

 

 

実務上は“放棄”より“処分”を勧められる理由


こうした理由から、弁護士や司法書士などの専門家も「放棄」ではなく「処分(売却や譲渡)」を勧めることが多いのが現実です。処分には登記の変更や契約書の作成などの手間はかかりますが、法的にも課税上も明確な手続きとして処理され、第三者に持分を移転することが可能です。例えば家族間で持分を売却する場合、「贈与」とならないよう価格設定や契約内容に注意が必要です。対外的に売却する場合は、共有不動産専門の買取業者に依頼するという選択肢もあります。

 

 

放棄ではなく「売却」という選択肢を


共有持分を持て余しているからといって、安易に「放棄」で処理しようとするのは避けるべきです。登記・税金・管理の問題が複雑に絡み合い、結果的に面倒なトラブルへと発展するケースが少なくありません。それよりも、共有持分の売却という手段を選ぶことで、正式な登記変更と引き換えに確実に名義を外すことができます。相手が家族であれ専門業者であれ、「引き継ぐ人が明確」である点が放棄との最大の違いです。最近では「共有持分だけを買い取ります」と明示している不動産会社も増えており、以前に比べて売却のハードルは下がっています。共有不動産に悩んでいるなら、まずは専門家に相談して「売却による整理」を検討してみてはいかがでしょうか?

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